相続放棄の手続は原則として3か月以内に行う必要があります。相続財産の帰属関係については、いつまでも不安定な状態に置いておくわけにはいかないというのがその趣旨です。
相続放棄手続きにおける熟慮期間という制度が設けられている以上、期限を経過した場合改めて相続放棄をしたいと思っても、これを行うことは基本的には不可能になります。
もっとも、相続開始から3か月(熟慮期間)の起算点については「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とされています。
その解釈によっては、申述を申し出ている人ごとに、やむを得ないのかどうかという事を判断して起算点をずらすことが可能になり、3か月経過後であったとしても相続放棄の申述をすることが十分に可能なのです。
実際に東京高等裁判所も「家庭裁判所は、却下すべきことが明らかな場合以外は相続放棄の申述を受理すべきものであると解される。」との決定を平成22年8月10日付けで出しています。
このような「却下すべきことが明らかな場合」に当たらないことを明らかにすれば、3か月を経過していたとしても相続放棄の申述が認められる可能性は十分にあるのです。
相続放棄申述の際にそういった事情をしっかりと示す必要が有るため、専門家である弁護士の活躍する場面があるといえるでしょう。
当該事案について、相続放棄を認めないことがその人にとって非常に不利益だ、ということを主張していくことになります。その際の書面の書き方などは、専門家である弁護士に委任する方が認められる可能性が高くなるでしょう。
ただし、一概に弁護士といってもこういった事案に強い弁護士を選ぶ必要があり、相続関係が得意な弁護士なのかは非常に重要な判断要素になるでしょう。